小笠原宇紀「裏刀神記」第1巻

光彩コミックス小笠原宇紀さんの「裏刀神記(うらかたなかみのき)」です。

伊賀忍者・墨田真改(すみだしんかい)は、宝刀・兼頼(かねより)に封じられていた刀神シヴァに、不老不死の力を授けられた。
自ら”人”の躰を創ったシヴァと共に暮らして400年経った現在──真改は、かつて自分を犯した宿敵・比良坂綱家(ひらさかつないえ)に再び見えたが・・・・・・表題作『裏刀神記(うらかたなかみのき)』、性交時に現れる魅惑的な刺青をめぐり、複雑に絡みあう男達の運命・・・・・・『比翼の鳥』全3話を同時収録。
魅力溢れるダイナミックな画像で描くハード・アダルトロマン。

美しいCGによるフルカラー口絵が4頁も収録されています。
現実世界なのですが、設定が不思議な力があったりとファンタジックな一冊です。

また、男同士でどうこうという悩みの次元はすっとんでいて(笑)、人間としての生き様が描かれた壮大な作品たちかなと思います。

□裏刀神記act.1~2

才能のない伊賀忍者・墨田真改(すみだしんかい)は、祖母から譲り受けた宝刀・兼頼(かねより)から不老不死の力を授かった。
宝刀にはシヴァ神が封じられていた。
そのシヴァが土から自分の「肉体」を作ったことで、一緒に暮らしはじめてから400年が経過した。
真改には、どうしても倒したい相手がいた。
その相手は、昔何度も自分を犯し、そして共に学んだ宿敵・比良坂綱家(ひらさかつないえ)だった。
綱家は、自分の意思とは関係なく、真改と同じ不老不死の身体を授けられてしまい、真改の仇討ちに付き合わされていた。
そして、また綱家と再会してしまった真改は、綱家に奇襲をかけるが・・・・・・というお話です。

これはこの2話分だけでは評価が出せず、続編を捜してしまった本でした(笑)。
話は至ってシリアスなんですが・・・・・・深読みするとどうしてもなんかおかしいところがあって、そこが個人的に気に入っています。

綱家は、あたし視点で見れば報われない男で、本当は真改のことが好きなんですが、ものすごい感情が鈍い真改にはまったく伝わらない。
好きな男は自分に仇討ちと襲ってくるので、殺すしかなく、そんなことがずっと続いて400年も経ってしまった。

本来なら寿命で死んでるはずなのに、死んでも一定期間経過すると蘇ってしまう身体・・・・・・それは真改の無意識の執着からだったのだが、そんなことに気付かず400年・・・・・・ orz

殺しては真改が蘇り・・・・・・というのを何度も繰り返しているんですよw

しかも、好きな人を殺すんです。

なんて哀れなんだろうと思うと、なにげにこの「裏刀神記」では一番可哀想な男なんじゃないかと思った。

気持ちが伝わらないことは哀れだと思うんですが、なんか痛めつけるときに嬉々としてるのが、非常にサドだなと思ったりしました。
(サドの一言で片付けていいのかわかりませんがw)

また、刀はシヴァ神を封じたもので、自分で勝手に土から身体を作って、司場(しば)と名乗って、この現代を真改よりも上手に生き続けていた。
刀のくせに司場はエロ刀として有名で、何かの変わりに持ち主の身体を奪ってしまうのです(笑)

刀のくせに(刀だから?)攻めなのですw

そんなわけで、真改は奇襲をかけるたびに綱家に犯され殺され、司場に犯され(こっちは一種のコミュニケーション)という、総受けなのです。

話は、現代の世界で綱家に奇襲をかける真改と、400年前の真改と涼太郎(綱家)の馴れ初めが収録されています。

□比翼の鳥(前・中・後編)

ヤクザで苑宮司組の組長・響専属の彫師・凍上は、偶然見かけた青年を放っておけずに自分がいる苑宮司組の屋敷まで連れ帰った。
青年は医大生で23歳の大気は、バツ1の子持ちで、奥さんに捨てられて、子供を取り上げられてしまったばかりだった。
そんな大気に、凍上は片羽しかない鳥の姿を見つける。
凍上は、不思議なものが見えるタイプで、人の一生を見ることができる。
大気の一生は、妻と子に捨てられて、若い年齢での孤独死だった。
あまりに寂しすぎる死を迎える大気の傍に、もう一人の片羽の鳥を連れた人間がいるはずなのがわかり、その人間と一緒に生きることを選べば寿命は延ばせないが、愛する人に看取られて死ぬという、もう一つの結末も見えていた。
大気は、凍上が響を彫っている姿を見てしまう。
響の全身には刺青が施されていて、身体が熱くなると模様が浮き出て、違う図柄になるものだった。
医大生だけど絵が好きな大気は、自分の未来がわからないながらも焦りを感じていて、自分に刺青の彫り方を教えて欲しいと頼む。
そんな大気に凍上は、刺青を入れたい人間を見つけてからだと言われ、そのときに脳裏に浮かんだのは親友の夏彦だった・・・・・・というお話です。

大気は結婚していただけ?あり、男同士というものがどうしても違和感があったのですが、凍上と響の関係を見ていて、さらに凍上と接することで、本当に好きなのは誰かということに気付くけます。

響は人間として大切な感情が欠落していて、話もしない状態だったけれど、藁にもすがる気持ちでやった刺青で、声のようなものが出るようになり、それがエスカレートして全身の刺青となってしまった。
もう彫るところはないし、これ以上は身体に悪いと止める凍上にもっと奥に刺青を入れて欲しいと願った。
それで完成したのが、刺青が身体の熱で図柄を変えていくものなのですが、それをはじめて見せたのが、大気だけだった。

あえてカップリングを書かないのは・・・・・・色々?組み合わせがあり、書かないほうがいいかなと(笑)。

話は非常にシリアスで、ちゃらんぽらんな気持ちで抱き合っているわけではないのですが、色々なのでどう表現しようかと悩みました(笑)

最後に、大気は自分の大切な人は誰かということを決心して、幸せな最後になれる未来を選ぶことができます。

凍上は、今まで手に入らなかった響の心をてに入れることができ、そして響をずっと影で守ってきた紫乃は、ものすごい久しぶりに響の声を聞けることができて、幸せを感じることができます。

個人的には結構続きを読みたい作品でして、あとがきに「地上の鳥」という話があるところまではわかりましたが、まだコミックスにはまとまっていないようで、非常に残念です。
そこでは大気の子供が登場するようなので、ちょっと気になっています。

あとがきで、刺青の模様を描くのにこの作品を描かれたときはコピー機で拡大縮小をやっていたので、苦労していたという記述がありました。

それを見てから、よくよく刺青を見てみると・・・・・・なるほどと思う苦労のあとがわかります。

今はパソコンがあるので、こういう模様は楽になったと思いますが、今回出てくる響は全身総刺青なので、ものすごい大変だったんじゃなかろうかと、創作現場を想像してしまいます(笑)。

「裏刀神記」は自分の感情に鈍感すぎる伊賀忍者・真改が何度も同じ過ちを繰り返しているというところで終わっているので、評価は非常に悩みました。

一緒に収録されている「比翼の鳥」が結構気に入っているので、こんなかんじに。

お勧めできない人は、血をみたくない人は完全に駄目です。
愛情表現?の一環で、真改は血を流しまくりなのです(笑)。
その前に、死んだと思ったら生き返ったりしますからw
あと、「裏刀神記」に関しては、この巻だけだと色々消化不良が起こりそうです。
苦手そうな方は、どうぞお気をつけてw

面白かった度:★★★★☆

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


*